※暗いのと若干えろ(???)なので注意、



好きという感情だけで全てが成り立つのなら、
それはどれだけ幸せで、酷く堕落したものだろうか。

何度恥ずかしいと言っても、この人は視線を逸らそうとしない。こちらが顔を背けようとすれば、許さないとばかりに唇を奪われる。まるで脳細胞がぐちゃぐちゃに溶かされて、掻き回されるかのような甘いキス。重なり合った肌の、服越しよりも生々しい熱と、伝う汗。闇に視界を奪われた世界で、全てがこの人の存在に包み込まれていた。
もう何度目だろう、一体何度、こうして体を重ねてきただろう。気が付けば抵抗を忘れ、自然にこの人を受け入れるようになっている自身がいて。それを自覚する度に、痛いぐらいに思い知らされる。この胸を満たす想いの意味と、どうしようもなくなってしまった深さを。
これが恋かと聞かれれば、きっと違うと答えるだろう。100年の恋がいつしか覚めてしまうように、この想いが消えてしまうことなど、絶対にあり得ないと思うから。

自分達はとても障害の多い恋をしている。どれだけ相手を想ったところで、現実は何処までもきっと残酷で、ずっと一緒にいられる保証は何処にも無い。いつか二人が離れる時は来るのだろう。でも、そのいつかが来てしまうことが、信じられなくて。鼓膜を愛撫するかのように、好きだと囁く唇が触れた。
その優しい声を聞く度に、これ以上無い幸せと、底知れない恐怖の中に突き落とされる。
考えれば考えるほどに募る愛しさと不安。好きだと思う度に、ただ怖くて怖くて仕方がなくて。そんな矛盾した想いのループに何処までも呑みこまれてゆくのだ。初めてこんなにも好きになった人から離れたら、自分はどうなってしまうのだろう。

縋るように腕を回して、掠れた声で名前を呼ぶ。
せめて、今だけは、今だけはどうか。

僅かに息を呑んだ彼が、耳元で笑う気配がして、また好きだと囁かれる。
その響きに、胸が張り裂けてしまうような痛みを感じた。





2011 June.18

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