※喘いでるので注意











突然体がガクンと傾いて、気が付いた時には、美咲は背後のベットに倒れ込んでいた。

「な…」

瞳を瞠目させて顔を上げようとすれば、すぐさま秋彦の体が覆いかぶさって来る。――押し倒されたのだ、そう気が付いた時には唇を奪われていた。

「んっ……ふぁ、…っ」

深く荒々しい口付けに抵抗する力が次第に抜けて行く。うっすら開いた瞳に映るのは、欲情した秋彦の鋭い瞳だった。
ようやく口付けが離れて行った瞬間、美咲は取り戻した呼吸に絶え絶えに息を紡ぐ。

「あ、秋彦さ……なんで、こんな…っあ、」

震える声で問い掛けるが、秋彦からの答えは無い。代わりに首筋に噛み付かれ、そこでいつの間に脱がされていたのか、ようやく服の胸元がはだけていることに気付いた。
徐々に下へと下がって行く愛撫に、しかし美咲は体を押さえ付けられているせいで、抵抗する事が出来ない。

「やだ、あき…っんん、ぁ、きひこさんっ…!」
「嫌だ…?こっちは、こんなに悦んでいるのに?」
「ひゃぁっ!」

秋彦の手は美咲のあらぬ所にまで伸びてゆき、美咲の官能を呼びさましていく。無理やり犯されている筈なのに、次第に美咲からも手を伸ばし、秋彦の肩にしがみ付いて与えられる快楽を享受するようになっていた。

「……あきひこ、さん」

美咲の潤んだ瞳が、縋るように秋彦を見つめる。

「――――――――して?」
「なんて言うわけが無いだろがこンのクソボケクサレ小説家があああ!」

――――響いたのは、こだまする程の大絶叫か、はたまた本がダイナミックに張り裂ける音か。
はーはーと息を荒げ、真っ二つに割れた文庫を両手に持ちながら、美咲は目前の男を睨みつける。男は紫煙を穏やかに吐き出すと、ソファーにふんぞり返って隣に座る大きな熊のぬいぐるみを引き寄せた。

「何だ、そんなに興奮したのか…」
「違うわボケ!一体この状況の何のどこをどう捉えたらその解釈が生まれるんだ!」

本を床にばしーん!と叩きつけ、憤慨した美咲は相手に向かって怒りの言葉を捲し立てる。

「大体、緊急事態だって言うから来てやったのに何だよこれは!分かってんのか、俺は締め切りが近いってあれほど」
「ふん、そんなもの俺だって既に破っている」
「自慢すんな!あんたは締め切り守れ!」

この人を担当する、可愛そうな女編集の姿がよぎる。

「つか、これで俺が仕事干されたらどうすんだよ、全部ウサギさんのせいだぞ」
「案ずるな、この純愛ロマンチカの漫画化が決定された暁には、編集部に言ってお前に作画を」
「断る!何が悲しくて自分の痴態を自分で描くような真似をしなきゃならんのだ!」




2011 Mar.19

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