* * *

「………」
「…なに笑ってんだよ」
重ねられた御重の箱を開いた瞬間、目の前に飛び込んできたのは予想通り色鮮やかな正月特有のお節料理の数々。
そして端の方にそっと詰めらていたのは、ふわふわと美味しそうな黄色をした、鈴木さん。
黒豆で飾られた艶やかでつぶらな瞳が、二人を見つめていた。
「別に?」

* * *

元日、それほど小さいわけでもないポストに詰め込まれるようにして投函されていたのは、大量の年賀状。
大半は野分宛てのもので、弘樹が知らない人物からのものばかり。残りは自分宛のもので、大抵実家やこういう時は流石にちゃんとした挨拶が書かれている教授からだ。
が、しかし、今年はその宛名の中から、珍しい人物からのものを見つけた。
「え、秋彦…?」
思わずぎょっとして、もう一度宛名と名前を見直す、しかしどう頑張ってもそれは幼馴染の名前にしか見えず、見慣れた端正な書体からも間違えでは無いことを物語っていた。
思わず眉間に皺を寄せて一枚の葉書を凝視する。一体、どういう風の吹きまわしだろう、あの秋彦から、年賀状が届く日が来ようとは。
どうせ嫌味でも書いてあるのだろうかと思いながらも、僅かな好奇心を抱きながら、恐る恐る裏面をひっくり返した。

* * *

ガサリ、再び大きなものがカゴへと放り込まれた音に、美咲の体がわなわなと震え始める。
「だから……」
たった今投入された紅色の袋には、ど真ん中に福の文字が存在を主張するかのようにでかでかと印刷されていて、カゴにはあらかじめ入っていた同じものがもう一つ。先に入っていた食品たちを下敷きに、堂々と鎮座していた。
「スーパーの福袋なんか買い漁ってどうすんだこのクソウサギ!」
ついに耐えきれず叫ぶと、相手は何食わぬ顔で袋をもう一つ手にして、再びカゴへと入れようとしている所だった。
「つーか、こんなに沢山いらねーし!」
「福袋には同じものが入っているとは限らない、とテレビで見た」
「これは全部一緒だ!」





2011 Jan.1

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