「ああ・・・・・・っはは、そうなんだ」

受話器越しの会話に相づちを打ちながら、顔が脂下がってしまうのはどうすることも出来ない。それは電話の内容でも、電話をしている相手が関係しているのでもなく、リビングの方から感じる視線の所為だ。
ここから少し離れたソファーには美咲が座っていて、鈴木さんを横倒しにして抱えながらテレビを見ている。電話し始めてから随時と時間が経ったが、少し前から何度もこちらを向くのだ、不満そうな表情を浮かべた顔が。

気になって暫くの間こっそりと観察していたが(本人は気づかれてないと思っているらしい)、その真意に気づいた瞬間愛しさに思わず笑ってしまい、孝浩に訝られた。
今日は仕事が一段落付いて、珍しく体が空いたためか通話時間は普段よりとても長いものとなっている。つまり、それが面白くないのだ。

そして今、秋彦が笑った瞬間、またちらりとこちらを見る拗ねた顔。
秋彦が笑えば笑うほど、美咲は拗ねる。あまりに可愛くて暫くそんなことを繰り返していたが、ついにその顔が寂しそうにしょんぼりと俯いてしまったことで、いよいよ電話など二の次となってしまった。

「孝浩、すまないが」

美咲に気を取られ、途中からは上の空となっていた会話を中断し、これから用事があると伝える。

「ああ、またいつでも掛けてこいよ」

じゃあ、と軽い挨拶と共に通話はあっさりと断たれた。そして秋彦が向き直ったのは、リビングのソファー。即座にそちらを見ると、美咲は慌ててテレビへ視線を戻し、忙しなくリモコンでチャンネルを変えている。そんな彼の様子にクスリと笑い、秋彦そちらへ足を進めた。隣にぼすっ、と腰掛けると、美咲の肩がびくりと跳ねた。

「やっぱりな」
「な、なんだよ」
「孝浩から美咲の話を聞くのも良いが」

そう言って顎を掬い上げて顔を此方へ向かせると、驚いた瞳が秋彦の意地悪い笑みを映し出す。

「本人に触れてる時が一番良い」
「っ・・・・・・はぁ?なんだそれ」

視線を逸らしながら、美咲は鈴木さんを押し付けるようにして逃れようとするが、勿論秋彦はそれは許されない。鈴木さんごと美咲をソファーへ押し倒し、その手からぬいぐるみを奪い取った。

「ちょっ、やめろって!」
「美咲・・・」

顔を近くから覗き込んでやると、それはじわじわと赤く染まっていく。 目をぎゅっと瞑ってしまったその瞼に、秋彦は優しい口付けを落とした。


全く、可愛いことばっかりしやがって。











リクエストその3、美咲くん嫉妬話でした。
美咲くんはいつもより長い時間電話してるウサギさんが気に入らなくて、しかも超嬉しそうに笑うもんだから悶々としている、といった感じです。




2010.02.03

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