「んっ、ふ・・・っ藤堂せんぱ・・・・・・」

ようやく離された口から紡がれる言葉は、息が上がっているせいで絶え絶えだ。慌てて肩を押して距離を取ろうとすれば、いつの間にか背にはしっかり腕が回されていた。美咲は上半身を仰け反らせる形でしきりに秋彦から離れようとする。

「先輩っ誰か来たら」
「2人きりの時は名前で呼ぶ約束だろう?」
「っ、秋彦さん!!」

思わせぶりに脇腹を撫で上げられて体がびくりと震えた。そんな美咲の反応に秋彦はクスリと笑い、再び顔を近づけようとしてくる。恥ずかしさに目をぎゅっと瞑り、やってくるであろう口付けに自然と体を強張らせた。

が、それは無機質なドアのノックが室内に響いたことにより阻止された。
ドンドン、と乱暴に叩く音と同時にピタリと秋彦が動きを止めた気配がする。恐る恐る目を開けると、美咲に向けられていた視線は扉の方を睨め付けていた。

「会長ー、手塞がってるんで開けて下さい」
「・・・川田か」

不機嫌そうな声色に一瞬びくっとしたが、回されていた手は名残惜しそうにそろそろと離れていった。その事に安堵し、ほっと胸をなで下ろす。 しかしこんな所に部外者がいては怪しまれてしまう。そそくさと立ち去ろして、しかし次の瞬間ぐいと顎を引き寄せられた。

「わっ!先ぱ」
「今日の放課後」

もう少しでキスをしそうなくらいの至近距離で秋彦が囁く。唐突だったことと、その響きの甘さに胸がばくりと跳ね上がった。

「ここに来い」
「っ、でも・・・・・・」
「会長命令」

クスリと笑った気配と共に、唇に吐息が触れる。言葉は脳内に染み込むように侵食してぐるぐると欠け巡り、それと同時に心拍数は速度を上げ、じわじわと顔に熱が上るのを感じた。

「ちょっと会長ー重いから速くして下さいよー」
「まってろ、今開ける」

すっ、と今度こそ秋彦が離れていく。触れそうだった唇同士は結局重なり合うことはく、しかし唇に残る吐息の感触に体がぞくぞくと甘くざわめいた。
引き戸が開かれると、大荷物を抱えた役員がぶつぶつと文句を言いながら中へと入ってくる。

「すまなかったな」
「いいえ、とりあえずこれで資料全・・・あれ、この人は?」
「っ!」

暫くその場で固まっていた美咲は、2人ね注目が自分に注がれたことでようやく我に返る。顔を上げれば、その役員は不思議そうにこちらの様子を伺っていた。

「し、し失礼しました!!」
「え、あ、ちょっと・・・」

慌てて部屋を飛び出すと、赤面した顔を見られぬように俯きながら足早に歩き出す。飛び出す直前一瞬見えたのは、呆然とこちらを見つめる役員と、にやりと何処か楽しそうな笑みを浮かべた秋彦だった。
反則だ、卑怯だ、あんな優しい声で囁かれたら、行かない訳にはいかないではないか。耳の奥に僅かに残る響きは、未だ脳を甘く震わせる。どんなに掻き消そうとしても、しっかり全身に浸透したそれはなかなか消えはしない。

それは今日の放課後、再び生徒会室を訪れるまで、美咲を翻弄し続けたのだ。











リクエストその2、パラレルものでした。何だか微妙な・・・
愛ロマで更に学園という、とことんパラレルに走ってみました。

藤堂さん→生徒会長
美咲くん→一般(?)生徒

みたいなのでした、特別出演は川田さんです。
イメージは題名の通り2巻に出てきたあの本です。





2010.01.09

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