「あっ、まただ!」 キラリと流れた一瞬の輝きは、すぐさま闇へと消えてしまう。空を必死に眺めて光を追う無邪気な横顔に、思わず吹き出しそうになった。 「ほら、ウサギさんもちゃんと見てないと」 流れ星は本当にすぐ消えちゃうんだからね、と美咲は相変わらず視線を上に向けたままだ。あまりに懸命な姿に少しだけ空に嫉妬する。 「願い事は三回言わなきゃいけないんだよ」 「お前さっきから願いなんて言ってないじゃないか」 「だって言う前に星が・・・あ、また!」 さっきから繰り返された何度目かの言葉に、今度は本当に笑ってしまった。 「なんだよ」 「ほら、そうやってさっきから『まただ』しか言ってない」 だから毎回言い逃してるんだろ、と指摘してやれば、美咲はぷうと頬を膨らませた。 「三回言うなんて、それ以前の問題だ」 「うるさい、すぐ消える流れ星がいけないんだよ」 星に責任転換をした所で何の解決にもならないだろうに。またクスクスと笑うと、笑うな!と美咲がついに怒り出してしまった。 「ウサギさんだって、願い事言ってないじゃん」 「俺は星には願わないし」 「へ、何で?」 すると美咲はようやくこちらへ視線を向けた。彼の浮かべる表情は、不思議そうな顔ですら可愛らしい。 この願いを叶えてもらうのは、流れ星などという迷信じみたものではない。もっと明確で、きっと確実な術がこんな身近に存在しているのだから。 「俺の願い、教えようか」 「え、なになに?」 美咲は星屑と好奇心の入り混じった瞳で秋彦を見つめる。そんな彼の耳元でこっそり願い事をささやくと、一瞬ぽかんとしたそれは暗闇でも分かるくらいに、すぐさま朱色に染まってしまった。 「な、ななな何言ってんだ!」 「叶うと思う?」 「しっ、知らねえよ!」 そう言って顔を逸らした美咲は再び空を見やるが、今度は完全にそっぽを向いてしまったために表情が伺えない。そっちは流星群の方向じゃないのにな。 クスリと笑って満点の星空を見上げると、キラリとまた一つ瞬きが宙を流れた。 美咲とずっと、一緒にいられますように お題byカカリア 2009.10.23 |